こんにちは、パラレルブロガーのゆーすけ(@yusuke_plmrstn)です。
2018年1月6日に東シナ海で衝突、その後14日に沈没した石油タンカー船 MV Sanchi(サンチ号)。
1月末には奄美大島の沿岸に重油と思われる黒い塊が漂着して日本のメディアでも取り上げられました。
海保が調査中、県や地元市町村も対策を協議中というのは理解できますが、それと同時に政府が首相官邸にやっと情報連絡室を設置したというのは国としてあまりにも遅すぎる対応だと思いませんか?
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MV Sanchiの事故発生からほぼ沈黙のメディアと国
何も僕は今回の重油漂着だけのことを言ってるわけではありません。
事件が発生しないと情報連絡室が設置されないというのは理屈として理解できます。
しかし、MV Sanchiの衝突が発生したのが2018年1月6日、積み荷のコンデンセートと重油流出の可能性が高まる中でも日本での報道はなく、1月14日に沈没して実際に流出が現実のものになった今でさえ各メディアは大々的に取り上げることはありません。
海保が奄美大島での調査を開始してから首相官邸に情報連絡室を設置したとありますが、設置の目的は奄美大島の重油漂着事件を含め、MV Sanchiから流出し続けるコンデンセートと重油に対するモニタリングだそう。
The Cabinet Office announced Friday it had established a branch to monitor information about oil spilled by the Iranian-flagged tanker Sanchi on Jan. 14 when it collided with a cargo ship.-japantimes
ひょっとして裏ではすでに専門の調査期間が日本でも立ち上がっていて、汚染海水や漁業への対策を検討中!今までは混乱を避けるために敢えて報道しなかったけど、やっと表向きに情報連絡室を設置したよ!というのであればそれでいいのですが、その可能性にかけるのもどうかと。
海洋生物と海水の汚染がほぼ確実な今、そしてその大半が日本に近々流れ着くことがわかっているにも関わらず、油が漂着したから今からモニタリングするよという呑気な対応ぶりには開いた口がふさがりません。
コンデンセートは薄まるのか?
流出するコンデンセートは揮発性が高い物質です。
コンデンセートに含まれるベンゼン、トルエン、キシレンなど人体にとって有毒な物質のほとんどは大気中に消えてしまうので、一部ネットで騒ぎてているような重大な被害は考えにくく、短期的なもので終わるというニュースもあります。
↑の記事は東京海洋大学の勝川准教授の記事です。
勝川准教授が言うように短期的かつ限定的な影響で済めばそれに越したことはなく、それを願うばかりですが、だからといって諸手を挙げて楽観的に安堵するのも違うと思っています。
今回のコンデンセートの流出は過去に例のない最大規模の流出事故です。
ここまで大量のコンデンセートが海洋に流れ出た事例はなく、専門家もその影響は不透明と発表しています。
黒潮の海流を見れば日本に汚染海水が全て漂着するようにも見えますが、実際の海流はこれと異なる可能性だってあるわけです。
しかし逆にいうと、影響が不透明ということは全てが悪い方向に転ぶ可能性も含んでいることになります。
沈没したMV Sanchiをサルベージ(船の引き揚げ)すれば流出事故も収束に向かいますが、可燃性が非常に高く有毒なコンデンセートを大量に船内に残したままの本船をサルベージするかどうかは、中国・イランの関係者で慎重に議論されています。
中国、MV Sanchiのサルベージ検討もコンデンセートの高い引火性と危険性から慎重に検討中。
China debating whether to raise sunken Iranian oil tanker from seabed: https://t.co/y2aEToADjo— ゆーすけ守屋祐輔@早起きのプロ (@yusuke_plmrstn)
2018年2月2日
サルベージが不可能ならせめて船内のコンデンセートと重油だけでも回収したいところですが、それもどうなるかわかりません。
海水温が低く、希釈されると思っていたコンデンセートが高い濃度のまま日本に流れ着く可能性もあります。
船内のコンデンセートが回収できなければ付近は汚染され続けることになるので、付近の豊富な食用魚がどんどん汚染され、日本で水揚げされ、我々の食卓に並ぶ可能性もあります。
奄美大島のように美しい自然がこれ以上の被害を受ける可能性もあります。
あまり暗いことばかりに目を向けたくはありませんが、事故が発生してしまって流出ストップの目処が立たない現在、その可能性は考えておく必要があります。
日本主導の調査が必要
先程の勝川准教授の記事の締めくくりにもありますが、今回のMV Sanchiの事故に関する国内の動きがほとんどないのは不思議でたまりません。
最近になってやっとチラホラ国内のネットニュースでも関連記事を見かけるようになりましたが、メディアの取り上げなさといったら異質そのものです。
だって日本の排他的経済水域の中で起きてる沈没事故ですよ?実際に奄美大島には予想よりも早いタイミングで重油が到着し、今後は四国、東海、島根の沿岸にも被害が広がる予想もあるんですよ?
相撲協会の理事長問題やオリンピックの話題ばかり報道しているような暇はないと思うんですが・・・。
一部では中国との関係悪化や2020年オリンピック開催の懸念を想定して敢えて報道しないのでは?との情報もありますが、真偽は定かではありません。
奄美大島の重油漂着問題
奄美大島に漂着した黒い塊がMV Sanchiから流れ出た重油かどうかは現在調査中です。
今回のような重油流出事故の際には “Oilfingerprinting” という特殊技術を使い、漂着した重油の成分とMV Sanchiから流出する重油の成分を特殊な薬品・方法を使って分析し、両者が同質のものであると証明する手順を踏む必要があります。
Fingerprinting Oil | response.restoration.noaa.gov
まぁ十中八九、誰が考えてもMV Sanchiの重油でしょうが、今後の対策が急務ですね。
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