こんにちは、パラレルブロガーのゆーすけ(@yusuke_plmrstn)です。
2018年1月6日に東シナ海で衝突、その後14日に沈没した石油タンカー船 MV Sanchi(サンチ号)。
有害な積み荷のコンデンセートと燃料油は現場での必死の作業のおかげで流出はある程度封じ込められていて、最も環境への影響が心配されるコンデンセートも高い揮発性のおかげもあって未曾有の大災害とまではいかないような予測になっています。
日本に流れ着く油(コンデンセート、燃料)は少量ではないか?と思われる中、NOC(National Oceanography Centre:国立海洋センター)による最新版の海流予測が発表されています。
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当初と異なる海流の予測
事故が発生した2018年1月当初、流出した油は黒潮に乗って西日本全域にわたって影響を及ぼすという予測図が出回っていましたが、2月になって実際の影響範囲と潮流から最新版の予測図が更新されています。
それがこちら。
図が2つありますが、右側が2月6日に更新された最新版、左側が事故発生当時に発表された古いバージョンです(参考:NOC)
どちらの図も流出油が日本に向かう予測は同じですが、よく見ると事故当初よりも大きく変わっている点がいくつかあります。
南側への影響範囲が広がっている
事故発生当時、MV Sanchiからの流出油は沈没地点から東に向かうという予測がありましたが、最新版では沈没地点を中心にして南に大きく広がっていることがわかります。
これは奄美大島への実害に加え、最新の海流予測に基づいたデータなので確度はぐんと高まっています。
沖縄方面への今後の影響が心配されます。
日本海側への影響はない?
最新版の予測図によると流出油は日本海側には流れず、主に太平洋側に向かって流れる見込みとなっています。
九州への影響は少ない?
海流予測が南寄りになったことで九州への影響も少なくなっているのではと思われます。
予測は予測で不透明
そもそもNOCが発表する海流予測図はあくまでも海流がこう動くであろうというデータだけが元になっていて、日本にたどり着く頃の油(コンデンセート、燃料油)の濃度までは記載されていないことには注意する必要があります。
上の図だけを見るとあたかも油の被害は広範囲に及んでしまうと見えがちですが、実はそういうものではありません。
海流は天候と同じで確実な予測がかなり難しいとされています。
事故発生当初、日本への影響は1ヶ月もすれば表面化してくるという専門家の予測が発表されていましたが、実際にはそれよりも早いタイミングで奄美大島への影響が出始めています。
NOCによると、今回更新された予測図は事故発生時に公開された予測図のデータも一部含んでいることから、今後予想以上に範囲が拡大したり大きく変化することが考えられるとされています。
Since these new results are based on only a small part of the region that our previous model projections predicted would be affected, I am concerned that the spread of pollution may actually be more extensive and complex than we previously thought.-NOC
それだけ予想を立てるのが難しい潮流予測なので、今後も大きく変わる可能性もありますね。
今回の予測図からわかること
最新版の予測図を見ると流出油の日本への直接的被害(漂着、沿岸への影響)はかなり限定的なものになりそうです。
しかし先程も紹介したように奄美大島沿岸への油漂着の件もしかり、油の影響で死んでしまったと思われるウミガメの件もしかり、被害は確実に出ています。
日本全土への大規模な影響は免れるかもしれませんが、局所的には甚大な被害であることは間違いありません。
いくらコンデンセートが揮発するからといっても沈没したタンカー付近の影響は確実視されていて、近い将来汚染された魚が食卓に並ぶ可能性もゼロではないと思っています。
日本の海が全滅するなどという最悪のシナリオは回避できそうですが、局所的に短期間の影響は避けられないものと見ています。
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