流出するコンデンセートと重油が日本に及ぼす影響と被害とは??

こんにちは、パラレルブロガーのゆーすけ()です。

2018年1月6日に東シナ海で衝突、その後14日に沈没した石油タンカー船 MV Sanchi(サンチ号)。

この船が積載していた136,000トン(960,000バレル)もの大量の天然ガスコンデンセート(natural-gas condensate)と燃料油は沈没した船から今でも流出を続けています。

黒潮海流に乗ってコンデンセートと燃料油は日本に近づいていて、すでに鹿児島の一部では海岸に燃料油らしき黒い物体がたどり着き始めています。

今回の事故の概要はこちらの「MV SANCHIの衝突、沈没、油の流出。日本で報道しないのはなぜ?」に、沈没したMV Sanchiについては「石油タンカーMV Sanchiについて簡単に解説します」に、そして相手船のMV CF Crystalについては「MV CF Crystalの基本情報を紹介します」にまとめていますので御覧ください。

石油タンカー船が沈没した場所

環境に確実な悪影響を及ぼすコンデンセートを積んだMV Sanchiはこの場所で衝突、沈没しました。

Sanchi1

衝突したのが1月6日、沈没したのが1月14日、コントロールを失ったMV Sanchiは海流と悪天候によるうねりに流されてどんどん南東に流れていき、かなり沖縄に近い場所で沈没したとされています。

コンデンセートとは

衝突した相手船はMV CF Crystalという貨物船。

MV Sanchiの乗組員32名は全員死亡、MV CF Crystalの船員21名は全員無事でした。

MV Sanchiが積んでいたコンデンセート、これは天然ガスを採収する時に地表で分離した形質液状炭化水素と呼ばれる物質です。

ナフサの成分ととても似ていて、人体、生体に非常に有毒とされるベンゼン、キシレン、トルエンなどを大量に含んでいる液体のことをいい、色々な触媒を用いたり化学薬品と混ぜ合わせることで我々の身の回りのあらゆる物の原料となる石油化学原料として使われます。

非常に引火しやすい特徴を持ち、高い揮発性もあります。

衝突、沈没したMV Sanchiにはこのコンデンセートが136,000トンも積まれていました。

衝突の衝撃でコンデンセートに引火・爆発し、船はあっという間に操作性を失います。

タンクから放出された有毒なコンデンセートを吸って命を落とした乗組員、炎に巻き込まれて亡くなった乗組員、なんとか海上に逃げ出したものの荒れ狂う波に飲まれてしまった乗組員など状況は様々でしょうが、これが全員死亡となった背景とされています。

大気中に放出されたコンデンセートと燃えたコンデンセートは有害物質を含みますが、揮発性が高いのでそこまで影響はないと考えられています。

問題は海に溶け出したコンデンセートです。

約25mにわたって破孔が生じて沈没したとされるMV Sanchiにはどれくらいのコンデンセートが残っているのか解明されていません。

今でもコンデンセートは流出を続けていると考えられていて、有害物質を大量に含んだコンデンセートは付近の海洋生物に甚大な被害を及ぼします。

グリーンピースが発表した資料によると、タンカーが沈没した付近は食用魚種が豊富に生息する地域のようです。

Sanchiの爆発と沈没は、ウマヅラハギやケンサキイカなどの多くの商業的な魚種にとって重要な産卵場所で発生しました。この時期、同地域では、タチウオ、キグチ、マサバおよびワタリガニなどの一般的な食用種が越冬地として利用しています。この地域はまた、ザトウクジラ、セミクジラ、コククジラなど、多くの海洋哺乳類の移動経路です。-greenpeace(PDF)

コンデンセートそのものが海中を漂いながら汚染範囲を広げて日本に流れ着くところまで想定されていて、この影響が日本全土に広がると日本近海で捕れる魚は深刻な汚染の影響を受けていることになります。

重油(燃料油)の影響

船が使う燃料油は重油です。

船は一般的にA重油とC重油という燃料油を使っていて、その他には機械同士の摩擦熱を抑えたり滑りを良くするための潤滑油なんてものもあります。

MV Sanchiにはこれら全ての油が約2,000トン残ったままになっていると考えられています。

沈没した船からは重油が漏れ続けていて、近隣諸国の政府は被害拡大を必至で食い止めようとオイル吸着シートを使ったりオイルフェンスを張って対策しようとしています。

ところが重油はすでに日本の鹿児島沿岸に到着しているとの報告がTwitterで見られるようになりました。

一部ネットニュースでもこのことは取り上げられています。

Asahi

油状固まり7キロ、鹿児島・宝島に タンカー事故関連か:朝日新聞デジタル

魚拓はこちら

船の燃料油は黒くてドロドロした形状をしています。

非常に粘度が高く、船のエンジンで使う時には事前によくヒーティング(温める)してから各機関に送り込みます。

そんな重油なので沿岸に流れ着いた時には写真のように黒い塊となって漂着するわけです。

一般的に石油タンカーの事故被害というと、海岸一帯がドロドロの重油で覆い尽くされた地獄絵図を想像しがちですが、運が良ければ今回のMV Sanchiの事故ではそういう類の被害は出ないんじゃないかと個人的に考えています。

Oil22

MV Sanchi沈没事故の本当の恐ろしさ

MV Sanchiの積み荷はコンデンセートです。

その一部は大気中に揮発し、一部は燃え尽き、大半は海に流出を続けています。

一方で船の燃料油も流出していて、それが今回鹿児島に漂着したとされていますが、重油2,000トンに比べるとコンデンセートによる被害の方が圧倒的に深刻だと専門家は口々に言います(決して重油2,000トン流出の問題を軽視しているわけじゃありません)。

Unique oil spill in East China Sea frustrates scientists

有毒性のコンデンセートによってプランクトンや海中生物はことごとく汚染されます。

食用種とされる魚が豊富に生息する地域での事故のため多種多様な生物への影響が考えられ、さらに海中にとどまるコンデンセート物質によって海の汚染は継続します。

人体に有害な化学物質だらけの魚が水揚げされ、それが流通し、健康被害を出す可能性も十分に考えられます。

海だけではありません。付近の鳥も汚染される可能性は高く、日本に飛来することも考えられますね。

船が沈没した付近は強い黒潮の海流があり、事故発生当時は1ヶ月もすれば日本に何らかの影響が出始めると専門家は予想していましたが、まさに予言通りの結果になりました。

Sanchi3

海水表面を漂うコンデンセートは重油と違って分離することが非常に困難な物質とされています。

見た目も重油のように黒い色ではなく黄褐色をしているため見分けることはかなり難しいようです。

すでに鹿児島沿岸に重油がたどり着いているということは、猛毒のコンデンセートだって一緒に流れ着いているはず。

今はまだ冬なので海水浴をする人はいないでしょうが、荒波を乗りこなすサーファーにとっては由々しき問題かもしれません。

今後日本の海で安心して海水浴できる日は果たしてやってくるのでしょうか?

沈没現場では中国、韓国、日本による重油の回収作業が続いています。

流出したコンデンセートと重油の回収作業、進行中 | ムクッといこう

うまくコンデンセートも回収できればいいのですが、海中に溶け出す分についてはどうやって対策すればいいのか。

日本のメディアはもっと報道すべき!

これだけ日本への被害が想定されているにも関わらず、日本のメディアによる報道はほとんどありません。

一部Twitterで今回のような情報が流れることはあっても、ネットニュースで大々的に取り上げることもなく、新聞やテレビでの放送もありません。

中国との関係悪化や2020年のオリンピックを睨んだところでの報道規制という噂もありますが、真相は不明です。

船から回収されたブラックボックスはすでにオープンされていてデータの解析が進んでいます。

どちらの船に衝突の原因があったのか究明が急がれていますが、洋上衝突で度々話題になる『回避義務』だけに照らしわせると考えてしまうと本質が見えなくなってしまう可能性もあります。

詳しくは「石油タンカーMV Sanchiの回避義務?事故責任の所在はどこに?」を御覧ください。

この件に関する情報は海外ネット、もしくはTwitterなどSNSによる現場からの直接の声が何よりも頼りになります。

例えば鹿児島に漂着した重油の問題なんかも、World Maritime Newsthe Sun dailyなど様々な海外メディアでも取り上げられています。

このムクっといこうブログでも微力ながら情報提供していきたいと思います。

MV Sanchiに関する最新記事は随時Twitterアカウント(@yusuke_plmrstn)で紹介しているので、フォローをお願いします。

ゆーすけ(守屋祐輔)

ゆーすけ(守屋祐輔)

複業サラリーマン

会社員×ブログ×デザイン×講師×投資の5つの働き方・稼ぎ方を実践する複業サラリーマンブロガー ▼複業で立ち上げたご署名ネットではこれまで1,600人以上、11,000点以上の作成実績。TV, ラジオ, 雑誌など出てます。▼経験から学んだノウハウや考え方、自分の人となりがわかる記事をお届けします

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